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2011年10月25日 (火)

坂東玉三郎特別舞踊公演

坂東玉三郎特別舞踊公演

 
 
行ってきました。
 
 
『傾城』『藤娘』『楊貴妃』を拝見。
 
 
拍手を忘れて息が止まる。幕が閉まって、思い出したように、割れるように劇場が揺れる。
 
 
夢の世界に染まっていた観客が、ふと我に帰った瞬間でした。
 
 
美術や演出、演奏はもちろん素晴らしいけれど、きっと何も無い状態でも、玉三郎さんが舞えばここは変わらず夢の世界になってしまうのでしょう。
 
 
無から生み出す。芸術の真髄。2時間、この世から抜け出して見えない世界へ出かけてきた気分です。
 
 
以下は『藤娘』を見て休憩時間に劇場で思わず打った内容です。拙い文ですが、生の感動が熱いまま残っているので、載せさせて下さい。
 
 
『藤娘』
 
 
 
舞台狭しと咲き誇る藤の中に浮かび上がった藤の精の姿に、一斉に客席が湧く。あっという心の声がため息になって、客席からこぼれる。
 
 
藤の精が抱えた藤の花には命が宿って見えた。藤の精に心を許して戯れているように見えた。
 
 
そしてまた藤の精自身も、藤に見えたり、女性に見えたり、娘に見えてもやはり人間でなく、自然の命を持った精霊なんだと感じられた。人間離れした美しさだった。
 
 
藤音頭の前。
 
 
上下中央と観客にお辞儀をして回る場面では、恥じらう仕種にドキドキしてしまった。
 
 
お酒に酔ってしまってふわふわと舞う愛らしい姿に胸がときめいた。人を好きになるように恋してしまったと思った。それからずっと、藤の精に心を持って行かれた。
 
 
終わりに近づくと、藤の精との別れが切なくなった。幕が下りなければいいのにと思った。
名残惜しい。離れたくない。そんな風に思うことは初めてだった。
 
 
もう一度見たいではなく
 
 
もう一度逢いたいと思った
 
 
自然を尊ぶ玉三郎さんの芸術観、人生観が凝縮された『美』
 
 
玉三郎さんにしか見えない自然の美しさが、客席にも見えた。
 
 
大自然を目の前にすると、言葉が出てこない。綺麗とも凄いとも言えない。ただただ立ち尽くしてしまう、あの静かに打ち奮える感動そのものだった。
 
 
人間にも女性にも存在しない『美』だった。
 
 
世の中に存在しない『美』だった。
 
 
こんな現実離れした美しさは『嘘』なのかもしれない。
 
 
嘘のようでも、目の前には、確かに藤の精が生きて存在していた。
 
 
目には見えない『美』を取り出して表現して、存在させてしまう。何の疑いもなく嘘を信じさせて魅了する。
 
 
踊りも型も越えた先にある限りなく宇宙まで続く世界を、初めて目の当たりにした。
 
 
芸術は深い。踊りは深い。
 
 
答えは自然の中にある気がする。
 
 
もっと大気を取り巻いて踊ろう。
 
 
自然に身を任せて、美しい物を美しいと感じよう。
 
 
そうして醜いものから目を背けずに見つめよう。
 
 
虚実、美醜、どちらも知って、どちらも取り出せる舞踊家になりたいと思った。

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コメント

実は、玉三郎のDVD『鷺娘』を購入致しまして。
画面だけでは、全てが伝わらない事もあり、
今回の特別公演を観に行けたらなぁ、と思っておりました。
結局、都合を付けられなさそうなのですが。(残念……)

順番を、付けられないもの、付ける必要が無いもの
と言うものがあります。
何にでも優劣で番号を付ける事を、
当然のように感じて暮らす中で、
忘れてしまう事です。
風景を観て、どの景色が最も美しい、
などと評価する事に、本来意味はありません。
昨日の夕日と今日の夕日、どちらが勝るなどと、
考える事は、愚かしい。

それでも、スポーツや音楽、絵画などの世界で、
私達は懸命に優劣を競い、それにより歓喜したりまた落胆したり、
それは多々、思い思いに得難い経験を、重ねて行くものですね。
ともすれば、そうして相争い、勝ち取った結果だけが全て、
或は、そうした結果にこだわらずとも、その過程で得たものが素晴らしい、
などと言う価値観のみに、支配されてしまわないとも言い切れない、
この時代、この社会の中で。

否応なしに、美しい。
有無を言わさず、素晴らしい。
是非も無く、面白い。

そんなものが、まだ残って居ると言う事を、
肌で感じる機会と言うのは、あまり多くありません。

例えば、これを、増やす為に。

美しいのならば、良い。
素晴らしいのだから、良い。
面白ければ、良い。

そう言われるだけのものを、唸らせるだけのものを、
如何にして、『これからを生きる者達』が、考え生み出して行けるか。
それを担う人々が、増えて行けば良い、と思います。
そして及ばずながら、
世の中をそう言った方向へと
引っ張って行く、力の一部になりたいです。

お家元が、その先を歩んでいらしたなら、とても心強いです。

投稿: 汀 | 2011年10月31日 (月) 18時30分

汀さんへ


優劣では計れない、人間の我のない、純粋なエンターテイメントこそ、全ての芸術の真髄であって欲しいと願っています。


大きく出てしまいますが、それを作れるようになるのが夢です!


世にある沢山の純粋な感動に触れて、自分なりに心正しく日々を過ごすことに努め学んで、芸道に生かして行けたらと思っています。


汀さんのお気持ち、近しいものがある気がして、心強く嬉しく感じています。


世の中全体がそうして良い方向に底上げされて行ったら素敵ですね!

投稿: 家元 | 2011年10月31日 (月) 20時46分

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